【水無月】 満月 :6月25日06時42分 (旧5/15)

『ダキニ・メール』

最近、稲荷が気になる


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 それは年明け早々の1月14日。渋谷にあるという架空の「稲荷神社」の夢から始まった。
それ以来、兎角「稲荷」に縁がある。ただそう思いながら、近所の松庵稲荷に度々足を運ぶ。

 2月。

ある日松庵稲荷をお参りした帰りに、かつてから知ってはいたが、そう親交があるわけではない人と会った。

「あれ?Kさんではないですか?」

K氏は深緑色のベンツの中から訝しげにこちらをみている。

「わたしですよ・・・。」

K氏はようやくことの状況を把握したかのように車から出てきて、

「Rさん、よくわかりましたね。わたしは打合せの時間に早く着いたので車の中で時間を潰していたんですよ。しかも、この車をあなたは知らないし、わたしの座っていた後部者席には完全にスモッグシートが貼ってある。外からは見えないはずだ。」

よくよく見ると、なるほど普通では見つけようがない。

ただ、なんとなく「感覚的」にわたしはK氏がそこにいることを知ったようである。

K氏はただ不思議がるばかりで、

「まあ、あなただから気付いたのでしょう。」

そういって、自分を納得させた。そして、

「ここで会ったのもなにかの縁ですし、携帯に連絡でもください。」

と、名刺に携帯の連絡先を書いて渡してくれた。

 それから、まもなくわたしはK氏と再会する。互いに連絡をとったというわけではない。

ある勉強会に偶然居合わせたのである。当初は周囲と何気ない話をしていたが、人数が減るにつれて、K氏は例の「偶然性」についてとかくわたしに尋ねる。

「なぜ?あのときあの場所にいたのか。」

「なぜ?気配を隠すようにあの場にいた自分をみつけたのか。」

このときはそれが、お稲荷さんの計らいだったということに、まだ気付いていなかった。そして、あの夢をみた。

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 4月28日、午前3時。

わたしはあまりに衝撃的な夢を観た。北海道に帰郷するという日の朝である。

車で大洗から苫小牧まで帰ろうとしていたため、早起きしなければならなかったことと前日まで仕事の片がつかなかったこともあって、主人は徹夜で起きていた。

うとうと寝ていたわたしは飛び起きて、ただうろたえる。

 「どうしよう・・・。テロが起きた。6月30日にテロが起きて、首都高速がアメリカ軍に撃墜されて・・・。」

夢とは思えないほどリアルな映像だったのである。しかも、それは寝付くたびにどんどんリアルに描かれる。

「まだ、早いからもう少し寝てていいよ。」

主人の言葉に夢であった安心感から再び寝付く。そして、また観るのである。

その続きを。そのディテールを。

それらの夢を繋げると、こういったふうである。

大手町にいる。通信関連のビジネスをしている。友人の何人かがそのプレゼンに参加していた。そのあと、主人と待ち合わせる。しかし、彼の仕事はまだ終わらない。

彼はなぜか、あるビルの下で行われているイベントに参加していて、そこで別な会議があるという。そのイベントは海のそこのように真っ暗な空間に青いライトが印象的にいくつも光っている、そんな会場で行われていた。

「じゃあ、あとでね。先に大井町の方面に不動明王の秘鍵を探しにいっているから。

それがあればこれからのことが防げるような気がする。これから起こることを。」

不動明王の秘鍵?

その秘鍵が「なに」であるのか、わたしにはよくわからなかった。ただ、夢の中の私は確かにそう言っていた。

「分かった。あとで追いつくよ。」

彼がそういって階段を下りていく背中に声が聞こえた。

「ミズホハサファイアニヤラレタ・・・」

その意味もそのときはよくわからなかった。ただ、青いライトがまるでサファイアのようだと思っただけ・・・。

先に出発した友人とわたしは黒塗りの車で赤坂の紀尾井町辺りを通って、芝大門の方面から大井へと向かう。丁度、芝大門の高速付近あたりで左手方向に白い煙が立ち上がるのが見えた。ピンク色の服を着た女性が

「テロよ!」と叫びながら、出てくる。

芝大門が真っ赤に燃えている。白い煙がモクモクと立ち昇っている。

まずい!間に合わなかった!

そう思うや否や、我々の乗っていた首都高速の前方の橋げたが土煙を上げて突然崩れ始めた。左手前方に大きな「大韓航空」の看板が見え、右手上空に何故か「アメリカ軍」の戦闘機が飛んでいた。

ああ、あれに爆撃された・・・でもなぜ?

後方に主人の乗ったタクシーが近づいている。とりあえず、主人と友人たちだけでも護らなければ・・・。

落ち行く高速の橋げた上にあって、わたしは「怪我は免れないが命が助かるから、まあいいか・・・、」と思う。

★  ★  ★

夢はそこで終わった。

目覚めたわたしは「不動明王の秘鍵」なるものを探す。

あれは一体なんなのか?

地図を広げて、夢の中で辿ったところに線を引く。

大手町、紀尾井町、芝大門、と。その中心には「日枝神社」があった。

そしてこの日現実に向かった「大洗方面」。「江戸崎不動」。これらを結ぶ共通点は?

これらを結ぶものは・・・「天海」、か?

天海が隠した不動明王の秘鍵?それって、

と今度は天海が結界とした江戸5不動に線を引く。だめだ。今の5不動ではない。

江戸時代の5不動の位置を割り出し、らに線を引く。

浮かび上がったのはその中心点なる「赤坂御所」。

「赤坂御所」と「日枝神社」、「江戸城」、さらに大井町…

大井町には一体なにが隠されているのだろう?

「Rさん、実はわたし大井にある寺の総代をやってましてね。

その寺には天海の像があるんですよ。寛永寺から分かれた重要な寺でして・・・」

K氏が話していたことが頭に浮かび上がる。

「わたしはその寺の総代をやっているということがどういう意味があるのかわからないんですがね・・・」

★  ★  ★

5月29日。

なにか心に不安がよぎる。あの「30日」はもしかして5月だったのか?と思われるほど。

この日、日本中の信用金庫のATMが都市銀行のATMと連動しなくなったというニュースが流れた。そして、わたしはあの夢のもうひとつの謎「ミズホハサファイアニヤラレタ」というメッセージを思い起こす。

金融機関の「システム異常」はすでに「テロの顕われ」であると。

さらに驚いたのはその会社が実在すること。日本の官庁を始め、多くの企業にそのシステムが利用されている事実。実際に行われた「イベント」があったこと。

「海のそこのようなイメージのセッテイング」。

それは、たまたま主人が関わっているイベントだった。

しかし、そのイベントはインド系の会社で「サファイア」というアメリカ企業とは競合しているということだった。

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「5月30日」が過ぎるとわたしの意識は回復し、再び「秘鍵」の謎を解くのに当たった。

そして、灯台下暗し。

「松庵稲荷」の謎。すべての稲荷の謎とともに、「赤坂御所」のそばになぜ「豊川稲荷」があるのかということに気付いた。

ここで「ダキニ呪術」が使われ、ていたのかもしれない。即ち、江戸時代は「紀州の殿様」のご領地で「ダキニの術」が使われ、その使役としての5不動があったのかもしれないと。

さらに江戸城の中に祀られていたという「秋葉」は「ダキニ」の別な表われとも云われている。まさに「ダキニ」を中心とした「護国の法」が江戸、東京を護ってきたもかもしれない、と。

K氏に連絡しよう。その「天海」がなんらかの鍵になるかもしれない。

友人とK氏と大井の寺に向かう。

そこには確かにあった。「不動明王の秘鍵」が。

そのときにはまだわからなかった。

しかしその「秘鍵」なる所以がどんどん明らかになる。

K氏は「我々の一族は紀州からやってきたもので・・・」

「赤坂御所」はかつては「紀州の殿様」のご領地。

繋がる。どんどん繋がる。

「住職はあの厨子を開けたがらないんですよ。」

「あの厨子の中にはなにが入っているんですか?」

「聞いてみてください。よくわからないんで。」

確かに由緒正しい寺で古今様々な仏像やら、なにやらがある。

ただ、表に出ているものではない。

なぜ?大井町のここに。

地図をみてまた驚いた。ここは単なる「大井」ではなく、「山王」、つまり「日枝」と深い関係をもっている。天海との関わりが何かしろあったところに違いない。

住職に聞く。

「その厨子にはなにが入っているんですか?」

「ああ、ダキニ天ですよ。父がね、信仰していたときには開いてたんですが、

わたしはまだ怖くてね、開けられないんですよ。」

ダキニ天、なるほど、怖がるのも無理はない。然し、単に閉じ込めておくのも怖い気がする。

 かくして、K氏が総代を勤める大井町の寺の中央に祀られていた小さな厨子の中の御像も「ダキニ天」であった。

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 私が夢で言った「不動明王の秘鍵」とは、きっと「ダキニ天」のことなのだと思う。天海は、当初紀州(つまり、熊野修験道の聖地のある場所)の領地内にあった「ダキニ天」を守るあるいは隠すために5不動を配した。

  紀州の領地は今は赤坂御所となり、そのそばに豊川稲荷がある。つまり、豊川稲荷のご祭神は、稲荷神と習合したダキニ天であるはずだ。

 しかし、豊川稲荷はダミーであり、何らかの理由で大井町(かつて山王と呼ばれた場所)に移されたのだ。あるいは、大井町のダキニ天すら、ダミーのひとつかもしれない…

天海の意思は「なにか」からこの「ダキニ」を護るために寛永寺から天海の像とともにこのダキニ天をここにもたらしたのかもしれない。

いずれ来るこの国の危機を見通して。

中世、天皇を護るために祀られた「ダキニ天」のように。

そして、ダキニ天は、あなたのそばにもいるかもしれない。
「稲荷神社」の名を与えられながら。

(by R)