血の記憶が目覚め、“死と再生”がはじまる
あれは7年前の冬のこと・・・。
熊野本宮を訪れ、この上ない幸福を感じた。
本宮の斎庭に足を踏み入れた途端にそれは身体を包み込んだ。
温かな、渦を描くように流れる水のような空気。
足元に拡がる円、円、円・・・
水泡。
まるで水遊びをするようにしゃがみ込む。
足元に流れる幾多の流れを汲み上げる。
誰にも見えない「流れ」。
いとおしさで離れられない。
そこから離れられない。
なにが是ほどまでにいとおしく感じられるのか?
ふと声を耳にする。
遠く風が運んでくる声。
川上から運ばれてくる声、声、声。
脳にこだまする。
「今宵1時ニ・・・」
その日は満月だった。
何故1時なのか?
訪れると門が開いていた。
「声」に誘われるまま、左社殿にかしづく。
ライトが照らされている。
そこに真っ赤な神が真っ暗な中に座っていた。
★
久しぶりに熊野を訪れる。
誘われるように。
左社殿の前にかしづく。
真っ赤な神は「死と再生」を促している。
これから「死」が訪れ、
そのあとに大変な思いをして人々は
「再生」するだろう・・・
わたしの中の月の道はまだ続いている
いつ止むのか検討もつかなかった・・・
神が血を欲している。
それだけは確かだった・・
(by R)
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