プロローグ
八月が去ってもまだ熱帯のように蒸し暑い東京を男は出発した。
新幹線「あきたこまち」に乗るのは初めてで、ひとり遅い
夏休みに秋田県の田沢湖・角館(かくのだて)方面にむかっていた。
前から気になってはいたが実際行くことにしたのは
休暇でそこに訪れた友人に聞いたことがキッカケだった。
「みずうみ」でインスピレーションがとめどなく湧いてくるのはなぜだろう?
中学で習ったまま忘れていた火山爆発にカルデラ湖ができあがる仕組み。
自然の膨大な力・エネルギー。
湖畔の切り立った大きな岩の平らなてっぺんにすわり
おそるおそる眼下(した)を覗き込む。
エメラルドの水面は男の記憶を呼び覚ます。
なぜ、あなたは解らないのだろう?
なぜ、大切なことは話さず、その場をかぎりに取り繕ったり
することに時間と力を費やすのだろう?
なぜ、自ら考えず・みずから決めず
みずから一歩を踏み出さないのだろう?
なぜ?
「みずうみ(湖)」は地球という脳のシナプス(神経細胞)なのだろうか?
湖面は彼に
さまざまな問いを湧きあがらせ
さきざきのビジョンを文字どおり
映し出す。
岩場のとぎれる先の砂浜では笑い声がにぎやかでとだえることはない。
家族で弁当を広げ楽しくビールを飲みかわし、くつろいでいる。
われわれ人間の The First Human Being も
さざなみうちよせる湖で暮しを営んでいたのだろうか?
2002/03/21 by S
>> A DAY IN THE LIFE
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