久方ぶりに訪れた湖の谷には高い峰がせまる

名も知らぬ鳥が急上昇・急降下を

どうしてか日がな繰り返していた。




「あんなところ誰も飛んで行けやしねえよどうせ無理さ、よしんば成功したにしても

太陽に焼かれちまうのが関の山だよ。」

「いい年をして夢物語みたいなこと言ってないで地道に勤め上げればいいじゃない。

お給料も高いんだし、ヤメたら私わかれるわよ。」





あなたは

ありふれた愛で人と関わり 

ささやかな知恵で工夫を凝らし

勇気をもって小さな一歩を踏み出す

そんな毎日を過ごすのではなかったか。

少年の日自分に誓ったことすらも忘れ

そのまま老いていくのか。





差し迫る明日は湖の谷の鳥もケモノも草も木も

天の星も知っていた

そして沈黙の湖面があなたにも知らせていた 
自然という自然はすべて

水鏡に映る朧月あなた彼スピードをやさしくつつみ

出発の朝を待った





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